M20 鈴与建設

このまちに、新しい流れを。

静岡駅前再開発ビル「M20」プロジェクトヒストリー

01.Introduction イントロダクション

2024年4月、静岡駅北口にオープンした再開発ビル「M20」。
静岡駅と新静岡駅の中間という市民の注目度の高い場所に位置し、「静岡駅前の新しい顔」「駅と人々の流れをつなぐまちの結節点」「人々が集うまちのたまり場」など、多くの役割を期待されています。
はじまりは、「御幸町9番・伝馬町4番地区第一種市街地再開発事業」から。
鈴与建設は、権利関係者としてだけでなく、事業の推進支援者、そして施工者としてこの事業に一貫して携わってきました。

「M20」の価値を創造するのは、鈴与建設の技術とこのまちへの想い。
未来につなぐ、新しい「築き」と「気づき」の記録です。

物件概要

ビル名称:「M20」

概要
静岡駅北口に、「御幸町9番・伝馬町4番地区第一種市街地再開発事業」を経て建設された地下1階、地上15階建ての複合ビル。
用途
静岡理工科大学グループの大学研究室や静岡デザイン専門学校、グループと地域を繋ぐSISTコラボスクエア、法人本部ほか、オフィステナントや子ども向け屋内型遊び場施設「KIDS PARK X (てん)」、飲食・商業店舗などが集まる商業施設「cosa」が入居し、地区の新たな賑わいの拠点としての役割を担う。

建築概要

工事名
御幸町9番・伝馬町4番地区第一種市街地再開発事業に伴う施設建物建築物等工事
発注者
御幸町9番・伝馬町4番地区市街地再開発組合
設 計
株式会社アール・アイ・エー
所在地
静岡県静岡市
主要用途
店舗、事務所、学校、駐輪場
構 造
鉄骨造(制震構造、一部CFT柱採用)、地上15階/地下1階
敷地面積
2,003.90 ㎡
建築面積
1,590.60 ㎡(建ぺい率 79.37%)
延床面積
18,275.03 ㎡
容積対象面積
17,027.11 ㎡(容積率 849.69%)
建築物の高さ
65.772 m

再開発事業とは

複数の地権者の土地や建物を一体的に整備する都市計画事業のことです。
地権者等が設立した再開発組合などが主体となり、敷地や建物を共同で整備・建設し、防災性、利便性、環境性を向上させて、地域の価値を高める総合的なまちづくりを行う事業になります。

Project History 事業の経緯や沿革

事業の推進支援者、そして施工者として
2012.07
御幸町6組東地区地権者街づくり勉強会 設立
2013.03
御幸町9番・伝馬町4番地区再開発研究会 設立
2015.07
御幸町9番・伝馬町4番地区再開発準備組合 設立
2019.02
静岡市による再開発地区事業採択
2020.09
静岡市による再開発事業認可
2020.10
御幸町9番・伝馬町4番地区市街地再開発組合 設立
2021.03
権利変換認可
2021.04
鈴与建設、特定業務代執行基本契約※を再開発組合と締結
解体工事、建築工事、地下道工事の施工、未処分保留床の処分責任、その他事業推進支援 等の契約
既存建物解体工事 着工
2022.06
再開発ビル建築工事 着工
2023.05
公募によるビル名称決定「M20」
2023.08
地下道接続工事 着工(2024.06まで)
2024.03
再開発ビル(M20) 竣工・引渡
2024.04
「M20」 オープン

このまちの「未来の姿」を築く、を実感。

VOICE NOTE 事業支援者として (再開発担当)

2018年9月より本事業に組合の事務局運営担当者として携わりました。私の最初のミッションは、権利変換計画認可・本組合の設立でした。
本事業の権利者は、1者(社)ではなく、該当区域内には複数の権利者(地権者)様がいました。それまで所有していた建物と新しい建物の一部を交換して所有するというのが、再開発事業における権利変換の基本的な考え方です。それぞれに事業や建物に対する想いがあり、建物に求めるスペックや機能も異なるところからのスタートとなりました。
権利者様全員のご要望をすべて実現できるのがベストですが、現実的には難しい部分があります。そこで、権利者様それぞれのご要望を詳しくお聞きし、多くの権利者様に納得いただけるよう協議を進め、全体最適となる提案をしました。

また、この事業は交通量が多い立地に加え、狭小地であること、既存の公共地下道と接続する土木工事も加わるなど、施工面での困難も予想されました。先行して事業に関わっていた立場として、施工部隊が円滑に工事を進めるための情報共有、近隣関係者様や地域団体様との連携、橋渡しも、私の重要な役割となりました。
この難しいプロジェクトを完成させることができたのは、まちを活気づけたいという再開発組合員の皆様の想いと、それをカタチにするという私たちの強い想いがあったからです。
計画から施工、竣工、その後の建物管理計画まで伴走できた経験は、非常に得難いものでした。
当社の事業が、このまちの「未来の姿」を築くものであると、実感しています。

02.Significance 鈴与建設の技術と挑戦

本工事の施工は、鈴与建設にとって複合した「はじめて」に挑むような内容でした。建物解体から竣工までの約3年の工事期間、事前の施工計画検討から含めると約4年にもわたる長期のプロジェクト。さらに静岡駅前の最も人通りの多い市街地エリア、複雑な既存建物群の解体、地下での作業を妨げる安倍川の伏流水、狭隘(きょうあい)な敷地での高層建築など、すべてが未経験となる難工事への「挑戦」の連続でした。
このような「難題」に対して、お客様、まち、社会が求める「未来の姿」を実現することが、当社のミッションです。これらの課題を克服したプロセスとともに、鈴与建設の「技術」と「挑戦」をご紹介します。

Technology 鈴与建設の技術

解体・地下工事

M20 Construction MEMO.01
  • 老朽化した既存建物9棟を、新築工事着工前の13ヶ月で解体。
  • 解体建物が境界際まで建っている狭隘な施工エリア。
  • 既存建物の資料が不明確であったため、解体を進めると、推測した構造でないなどの想定外の事象が多発。
  • 地下躯体も地上建物同様境界際まで存在していた。
  • 安倍川の伏流水による地下水位が高く、建物解体時だけでなく、再開発ビル建築工事~地下道接続工事全般にわたって影響を及ぼした。
未経験の難題へ、
現場+本社の総力戦で挑んだ。
VOICE NOTE 施工の現場から (施工担当)

本工事は、鈴与建設にとって多くの難題が連続しました。既存建物の解体時から、施工条件の厳しさが、これほど際立つ現場の経験はありません。特に、本工事エリアの地下を流れる近隣河川の伏流水には悩まされ続け、建物の地下躯体解体時だけでなく、再開発ビル建築期間中にわたって懸念となりました。
対策にあたっては、現場チームに加え、本社に設置された本工事対策プロジェクト内でも妥当性を確認し、総力をかけて山留・揚水対策の方法を検証しました。再開発ビル建築期間中も急なトラブルにも対応できるよう体制も整えました。そして、プロジェクト全般にわたっての視野を広く持って、解体から竣工に至るまで、あらゆる工法の選定を行ってきました。

CFT構造

M20 Construction MEMO.02
  • 本物件で採用された柱(1F~12F)は、通常鉄骨造の高いじん性(粘り強さ)に加え、高層建物としての剛性を備える「CFT柱(コンクリート充填鋼管柱)」
  • 鋼管内に密実にコンクリートを充填する必要があり、施工計画、管理の重要性から、施工にあたり、「CFT造施工管理技術者」資格取得者による管理に加え、施工会社として「CFT造施工技術ランク」取得が求められた。
  • 鈴与建設には、資格取得者は1名在籍していたが、技術ランクが未保有のため、事前に施工技術習得指導を受け、実大施工実験を実施のうえ、新都市ハウジング協会より「CFT造施工技術ランク:B」を取得し、施工を実施した。
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組織・ヒトの両面で、技術を磨き続ける。
VOICE NOTE 施工の現場から (施工担当)

「CFT造施工技術ランク」取得のための実大施工実験では、現場外において、材料等もすべて本施工と合わせたモックアップ(模型)を作成しました。鈴与建設の管理水準が品質・技術的に問題ないか、実施工において留意すべき点はどこかなどの確認、フィードバックを受けるためです。そして、認定を取得することができました。また、施工にあたっては追加で 2名が「CFT造施工管理技術者」資格を取得し、万全の体制で管理に臨みました。
今回の認定は、一定レベルの難易度のCFT柱であれば今後も施工可能ですが、現場の難易度によって追加の認定や施工技術指導が必要となるほか、現場担当者としての「CFT造施工管理技術者」の配置も都度求められます。組織・ヒトの両面で技術を磨き続けることの重要性を、改めて感じる事例となりました。

実大実験スナップ

制振装置(摩擦ダンパー・粘性壁)

M20 Construction MEMO.03
  • 建物構造は、低層階に粘性壁、高層階に摩擦ダンパーが採用された制震構造。
  • 制震装置の据付にあたり、現場運搬時や施工中の衝撃・荷重により、装置に応力がかからないような施工管理が必要。
  • 鉄骨建方との同時施工による、複雑な施工手順・計画への対応が必須。
後工程に気を配る工程管理が求められた。
VOICE NOTE 施工の現場から (施工担当)

制震装置を鉄骨へ固定するにあたっては、複数工程にまたがる手順が必要でした。鉄骨建方時は仮締めに留め、上階2層分のスラブコンクリート打設が完了後、制振装置に施工上の荷重がかからない状態となってから本締めを実施しました。制振装置の本締めが実施できなければ内装工事の詳細な工事スケジュールの目途も立てられません。鉄骨建方~スラブコンクリート打設といった、躯体工事~内装仕上げ工事まで睨んだ工程調整が必要でした。
通常の施工以上に後工程に気を配る工程管理が求められました。

外装工事

M20 Construction MEMO.04
  • 高層建物としては工程が非常に多く、止水納まりの難しい仕様。
  • 工程が多いため、墜落・落下・飛散リスクも大きい。
アルミ縦ルーバー
  • 当初は、足場設置のうえ、1本1本バラで人力取付けする計画であったが、その方法では外部足場が必要かつ膨大な部材数となり落下リスクが増大。
  • 対応策としてアルミ縦ルーバーを工場でユニット化することで、無足場での取付を実現。(現場での部材数・労務工程を削減)
  • 設置したアルミ縦ルーバーを利用した改良足場による、その他の外装材や建具、資材等の施工を計画。
  • 作業性を確保しつつ、通常足場よりも使用材料、作業量を削減させた。
外装を貫通する連続メンテナンスバルコニー
  • 外壁面を鉄骨貫通した持ち出しにメンテナンスバルコニーを設置する仕様であり、建物内への漏水リスクあり。
  • 防水納まりの試行を繰り返すとともに、施工後の散水試験を実施し、漏水発生のないことを入念に確認。
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施工管理の難しさと面白さが共存したケース。
VOICE NOTE 施工の現場から (施工担当)

アルミ縦ルーバーのユニット化にあたっては、施工部隊の検討だけでは決められませんでした。設計監理者・協力会社とのすり合わせ等、外部も含めた技術的リソースをフル投入して、実現の可否を検討し、何とか実施にこぎつけました。
外壁漏水対策においても、施工後の試験だけでなく、実物大のモックアップ制作などの入念な事前検討を重ね、徹底的な漏水リスクの低減を実現しました。外装工事という一連の作業の中に、施工方法や施工計画といったプロセスを大胆に見直したことが、いい結果を生んだのです。 課題解決を図るダイナミックさと、細部にこだわり建物の品質を追求する緻密さが求められ、まさに施工管理の難しさと面白さが共存したケースであったと感じています。

地下工事・地下道接続

M20 Construction MEMO.05
  • 既存地下道を本体建物の南西角部に接続する工事であり、新たな動線を接続することで歩行者の回遊性の向上と都市機能の更新を目的とした工事。
  • 公道を切り開いて施工するメインのボックスカルバート(地下道路の空間を確保するための構造物)据付の施工方法と、据付前の山留・止水薬液注入計画等がポイント。
  • 公道直下への地下道構築であったため、夜間工事にて対応のうえ、日中は一般歩行者の歩道の確保も求められた。
  • 上記の条件をクリアするため、地下道構築をする施工エリアすべてを切り開くのではなく、一部を切り開いて、カルバートを地下へ下ろした後でスライドさせる工法を採用。
  • 建物解体時と同様、想定外の地中障害物の干渉もあり、柔軟な施工計画の見直しを求められた。
鈴与建設チームの強い一体感を経験。
VOICE NOTE 施工の現場から (地下道接続工事担当)

地下道接続工事も、再開発ビル建築工事等と同様に本事業再開発組合様からの発注です。メインの再開発ビル建築工事と連動する工事のため、地下道工事の進捗が本体工事の進捗に影響するというリスクがありました。そのため、再開発ビル建築工事の現場担当者とだけでなく、土木や建築の本社工事部門との入念な情報共有を常に心がけました。
当社土木工事部にて行う通常の工事との大きな違いは、社内の各部門との関わりです。本体工事進捗へのリスクや、通常の土木公共工事ではあまり経験しない地下道の内装工事なども含んでいました。不慣れな部分については、建築の現場サイドとの連携、本社品質技術室からの技術支援など、会社全体からのバックアップを受けて、無事に竣工しました。改めて、鈴与建設全体でのチームとしての一体感を感じられる経験でした。

最後に

本事業は、鈴与建設にとって単なる一つの実績ではありません。様々な課題に「挑戦」する中で立ち向かったプロセス、解決のノウハウ、すべての経験が次代につなぐべき「建設技術」となり、新たな未来の姿を築きます。強く願うのは、完成した「M20」、その建物と公共空間とを結ぶ地下道が、今後数十年にわたって人々に愛され続け、賑わいの拠点となることです。これからも、暮らす人、訪れる人に、このまちを好きになる理由を増やしていきます。

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